まかれたところで咲きましょか
半径5メートルの雑談記
プログレス

財布を落とした話

どこいった?ミニマリストの財布

はぁ~起きた。起きたなあ…

寝るか起きるか。起きるか寝るか。

さっき起きたのは何時だっけ?

いつだって昼寝の時間にはこと欠かない。ねむくなったら眠ること。

それはネコに教わった秘訣のひとつで、大切に実践していると身につく動作なのだが、人によっては(わたしのように)なんなく習得できてしまうこともある。

コツはといえば、まったくもう時計なんてものは聞いたことがない顔で、ゴロゴロしながらグーグー休むことだろう。

ゴロゴロ。グーグー。ゴログーグー。

鳴らすのはノドでもいいし、鳴らなかったらお腹でもいい。

とりあえず首だけひねって窓の方に目をやると、カーテンのすき間越しにのぞく空はまだ明るい。

3時間?そうかそろそろ夕方かあ。

窓の外の夕暮れ

大体のあたりがついたことに満足をする。

さてと。ここからどうするか。

再びとっておきの手段を使って、このまま布団のぬくもりにくるまっているのもいい。

ただし、それをやってしまうとなると次に目を開けた時、世の中のスーパーはどこも閉まっている可能性がひじょーに高い。

起きるか。寝るか。

食べるか。寝るか。

柱にかけてある時計の針を、今一度ながめながら考える。

もーいいか。そろそろなにかお腹に入れよう。

2度寝を足せば13時間。この響きに満足をしたので布団を出ることにした。

枕元に置いてあったコーヒーボトルの蓋を開け、一口すすって身を起こす。

うまいなあ。ちょうどいい。

必要なタイミングで必要なものを、いつでも補給できるよろこび。

これもまたダイレクトにしあわせを感じられるひと時だ。

 

なんにするかな今日は…。そうだそう。カバンの中身を出さずに寝たんだった。

洗面所に向かう途中、右手の壁にはいつもどおり静かに寄りかかるブロンプトン(自転車)の姿が目に留まる。

夕暮れ時の室内とブロンプトン

前後のバッグからは、昨夜の荷物がまだ飛び出し気味のまま、こぼれそうになっている。

確かにきのうは自宅に戻ったのが遅く、あくびを連発。

日付の変わった夜道をすり抜けるのも心地いいのだが、着替えをし、なにか1本映画でも観ようかと思う内に沈没をしていた。

今はまず、このバッグの中のどこかに隠れている歯ブラシとヒゲソリがいる。

とりあえず、ぜんぶ中身を空けて片してしまおう。

それが済んだらシャワーを浴びて食糧の調達だ。

 

すべては順調に回っていた。

身支度が整い、玄関口にかけてある買い物用の袋に手を伸ばして中をみる。

回収用の空ペットボトルが今日は3本。これでもう、あとはカギとアレを持ってくればいつでも出られる状態だ。

収納棚の引き出しを開け、一番上の段からカギをつかみ…

カギをつかんで…カギを…

ん?!

いいぃ??!

………。

異変に気付いたのはこの時だ。

アレあれあれ???

 

ないものがある。一緒に入れてあるはずのものがない。

あるべき棚から消えた財布

あきらかにない。ないないない。

アレはそう。

それは青い色したお財布だ。お財布ちゃんはどこいった?

まだすこしもやけ気味だった脳が一気に目覚め、ずわーんと勝手に動き出す。

今日はどんな景色に出会うのか。

なにかある。ここにもきっと意味がある。

テレビを見なくなってから早5年。目覚めると、普段からそんな風に思う癖がついたことは収穫だ。

間違いない。このことは今朝の(いや夕方か)トップニュースに決定だ。

 

なんでだろう?引き出しには戻したような、してないような…

どっちだろう、どっちなのか。

ともかく鍵はあるのだから、さっき荷物を片した時に、財布もさわっていたのならここへと一緒にしまったはず。

すぐに買い物に行くからと、無意識のうちにどこかに置いてしまったのだろか?

それとも外に…

いーや、そんなはずはない。

自問自答をするうちに、だんだんと落ち着かない気分になっていき、起きてから動いたところを手当たり次第に辿っていくのだが、ないものはなくあとの祭り。

まったく気配を感じない。

 

探し続けること1時間。

浴槽の中からクーラーバッグ(うちの冷蔵庫)の中まで。

あるはずのないところまでを、いったい何度確かめたことだろう。

無情にも、まったく事態に変わりはなく、この間、無言のままずっと動き続けていたはずだ。

探すのをやめた時、見つかるなんてよくある話。

「ほんとは気にしてないからねー」と、最後の手段で思考を停止。

浮かんでくる寓話の知恵にもすがりながら狭い部屋をうろうろしても手ごたえがなかった。

財布の中身は何だったっけ?

運転免許証、保険証にカードが4枚…

なくすとややこしいことになりそうなものたちの姿が走馬灯のように脳裏をよぎっていく。

現金は手持ちがなにもなく、カードがないとお金を下ろせない。

せっかく布団から出たものの、顔を洗おうが着替えを済まそうが、つまりは買い物ができないのだから、この胃袋はずっと鳴りづづけたままになってしまう。

うーむ。冷蔵庫がない暮らしはこういうこともおこりうるのか。

これは新たな発見だ。

今はただ、早く外に出て好きなものを手に入れてきて、おいしくいただきたいだけなのに。

このままでは色んなところに電話をかけなきゃならず、止めたりなんなりのやりとりで忙しいことになっていく。

この部屋の中に青い財布は今いない

ずいぶん時間がかかったが、そのことをはっきりと悟ったのだ。

 

いつだ、一体いつなんだ?

外だとするなら、なにか糸口になるものはないか?

財布を最後に確認したのが、帰り道だったのは覚えている。

なぜなら普段とちょっとちがう動きをしたからだ。

あれは足りないことに気づいたアイスコーヒーを、1本コンビニで手に入れた時。

そう、いつもならば定位置のバッグのポケット部分に、財布は深く差し入れてしまうのだが、この時はきれいになった洗濯物やらなんやらで(うちには洗濯機がないのでタオルやシーツなどの大物は出先で巡り合った時に洗う)、2日半分の荷物が詰まってすでにパンパン。

落っことしちゃいけないな。

そう感じながら、店の明かりを頼りにできるだけうまく荷物のすき間に挟み込み、ペダルを回して家路についたのだ。

漕ぎながらも途中で前に手を伸ばして、ごそごそ2、3度確認したのも覚えている。

すばらしい。なんて鮮明な記憶だろう。

あれだけ気にかけていたのだから、途中で落とした可能性は低い。

近くだ、きっとあるぞ、その辺に。

 

気がかりなのは紛失からすでに15時間は経っていることだ。

思ってからの動きは早かった。

玄関のドアを開けて辺りを見る。姿なし。

通路を歩いていき、突き当りにある階段の踊り場を見る。カタチなし。

階段をゆっくり1段1段降りながら、入口のガラスドア付近に転がっていることを期待する。

財布を落としたと思われる現場の階段

発見なし…

うーむ。ないか。仕方ない。捜索範囲を広げて建物外へ。

ドアを押して、半歩先、左手のごみ置き場になかったら、右手の花壇の周りをみて…

と、待てよ、待て。あるじゃあないかもう一か所。その前にのぞいてみておくべき場所が。

どうだ、ここはどうなんだ?

 

あああ…

ううう、

あったー

あった、あったあー!!

おおおおお。こんなにうれしかったのはいつ以来だろう。

204。204。

気分は合格発表を伝える掲示板に、自分の番号を確かめた受験生さながらだ。

財布はそう、水道の請求書や数枚のチラシと一緒に、集合ポストの中に置かれていた。

ひらめきが現実に変わったような心地がし、よろこびのあまり、苦節2時間の疲れは忘れてしまう。

きっと、2階への階段をブロンプトンを肩に担いで上る時、角度が付くのですき間からこぼれてしまったのだろう。

郵便配達の方なのだろうか。それともこの建物の住民の方なのか。

いずれにしても日頃はすれ違うことも少なく、会ってもあいさつをする程度の方だろう。

どなたかわからないけれど、拾って入れてくれた方への愛情を急速に感じると同時に、自分も落とし物を見つけた時におなじことをできる人でありたい、そう思うのだった。

そのあと、急いで銀行へ向かい、駅前の第2冷蔵庫(コープ生協)で手に入れたカツ丼と焼きそば、サバ缶の味が格別であったことは、いうまでもない。

余談

お金ほど実体のないものも珍しい。

そもそも世の中にあるもので、値段のついているものなど何もないからだ。

値段はどんどん変わるので、おなじものがある日突然、倍にもなる。お弁当などはちょっと寝て起きたら半分になっていたりも平気でする。

お金もひとつのエネルギー。自分の持つエネルギーは価値を感じるものにきれいに使いたいものだ。

どこでついたのか、この一件で真ん中にずばっと傷の入った財布をながめながら。

戻ってきた財布と名誉の勲章の傷

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