古いアルバムをめくるように
前略 「ミノワマン」こと美濃輪育久(みのわいくひさ)様
突然お手紙を差し上げます失礼をお許しください。
先日、格闘技好きの友人からの紹介で、日夜猛特訓に励む超人ミノワマンの映像を拝見しました。
小生、レスリングへの知識がまるでなく、始めはついていけるか謎だったのですが、「マン」をつけると強そうだからというリングネームの由来や、ひとり上手なので、団体競技よりも個人競技が向いていると気づいたエピソード。
また、蹴ったボールを自分でとりにいく公園での一人サッカーの様子へと触れるうちに、えらくグッときてしまい…
民放のテレビ番組の録画であるらしく、貼り付けられないのが(著作権がらみ)歯がゆくてなりません。
代わりに載せられそうな公式ビデオの中から人柄が伝ってきたものを。
「何ごとも基本が大事だ」老師の教えの元に閃き、次の試合に取り入れていくというアイディア。蛇拳、酔拳、少林寺木人拳、クレージーモンキー笑拳にストリートファイター波動拳の動きを披露するミノワマン選手。記者たちから寄せられる質問への誠実で真摯な応対にも好感を。
映像出典元:YouTube:Offcial Channel of DREAM 「Minowaman-Training & Interview」
バラエティ豊かな数々の刺激たち。中でもとりわけ胸にしみたのは、どこかの浜辺での練習シーンでした。
それは偶然、頭上を横切った大きな飛行機を見かけたとたん、負けじとなにか反射的に駆け出す姿をとらえたもので、これには静かに感動を。
目に焼き付いてはなれず、その後は見上げた空に通過するものをなにか探してみるのですが、東京の片隅で不発に終わっています。
それと並行して、実はいくつか思い浮かぶことがありました。
どれも記憶の奥底に眠る儚いものばかりで、書き起こすには自分の世界を本気で出し切るミノワマンの心意気。
火事場のクソ力が必要になりそうです。
まだ見ぬ高み、ヘブンを目指して。
「あーなんだかわからないけれど、そうしたかったんだよなあ…」
ここから先は、幼き頃に熱中していた遊び(特訓)と当時の思考の回想になります。
笑って見守っていただけたら幸いです。
おおおお、やるぞ。やってやる。これができたらすごいんだ。
あかるい春。桜吹雪を見かけると、1番舞い散っている木の真下に滑り込んで、今後一切花びらが地面に落ちないよう捕まえたくなっていくのはなぜなのか。
よーし、いい塩梅に散ってきた。
理由なんていらない。
これから先、視界360度に動きがあるものを、なにがなんでもキャッチしていく、そう思うだけでなにかもうワクワクしてしまうのだ。
強いて意味を探すなら、これはきっと動体視力を養う、またはくるくるまわる花びらの一瞬先の軌道を読むことで、予測能力を高める訓練だ。
どうしても両手では足りない、追いつけるはずのだけれど追いつかない。
バテた時は、特別ルールとして目で捕捉。見切りをつけるだけでもよしにする。
今年は降るかなあ…。あー降ってくれかなあ…。
つめたい冬。珍しく雪になった時も、うれしくなって血が騒ぐ。
あっ、ダメっ、お願いもうちょっと、まだやまないでもうちょっと!
夜半から降り出したりされたりすると、居ても立ってもいられない。
こっそりと着替えて家を抜け出し、まだ誰にも汚されていない白銀の聖地、近所の公園にむかうのだ。
気を引き締めろ。春の桜とはレベルがちがう。
足元は、長ぐつの重みにふらふらで粘り腰が必要になる。
白々とした空も、舞い散るものをカモフラージュしている。
より高度な技術、「心の目」で雪片をとらえなければ、満足のいく結果はえられやしない。
ぴしゅ。ぴしゃぴしゃ。
時々うまくいって、繰り出すこぶしに当たりながらすぐに溶けていく雪たち。この感触が最高なのだ。
にんまりしながら動き回るうちに、寒さも汗も飛んでいく。
いいぞいいぞ。これはいい。寒冷地対策にもなるな。
自然の恵み。滅多にない貴重なトレーニング環境にいること、それだけでもドキドキ高揚するもんだ。
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